シニアの転職。クリステンセンに学ぶ「人生の理論」(1)

クリステンセンと言えば、ハーバードビジネススクールの人気教授であり、かつ著書「イノベーションのジレンマ」がベストセラーとして有名です。今までクリステンセンの著書を最後まで読んだことがなかったのですが、本屋でふと目に入った「イノベーション・オブ・ライフ」をいう本を読んでみました。

            <出典元:https://www.amazon.co.jp/>

その率直な感想はというと、「もっと早くこの本に出会いたかったな〜」というものです。企業・仕事という観点での「イノベーション」については多くの書籍や論文で紹介されていますが、そもそも「イノベーション」という「理論」として正確に定義し、そしてその理論を「人生、私生活」へも適用するというクリステンセンの試みは、とても新鮮でありかつ貴重に感じられたのです。

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クリステンセンについて

クリステンセンは、ハーバードビジネススクール(HBS)の名物教授で、その経歴は次の通りです。

  • 生年月日:1952年4月6日 (66歳)
  • 出身地:ソルトレイクシティ
  • 設立団体:イノサイト
  • 学歴:ハーバード大学、オックスフォード大学
  • 書籍:イノベーションのジレンマ

初の著作である『イノベーションのジレンマ』によって破壊的イノベーションの理論を確立させたことで有名になり、企業におけるイノベーションの研究における第一人者となっています。

            <出典元:https://www.amazon.co.jp/>

その業績はというと、今更私が書き連ねるほどのこともなく全世界に知られた内容ですが、WIKIPEDIAでは次のように紹介されています。

クリステンセンは1952年4月6日にアメリカ合衆国ユタ州ソルトレイクシティに8人兄弟の第二子として生まれた。ブリガムヤング大学経済学部を首席で卒業後、オックスフォード大学の経済学修士、ハーバード・ビジネス・スクールの経営管理学修士、経営学博士 を取得した。学生時代は203cmある身長[を生かし、バスケットボールチームに入っていた。

Wikipedia

ボストン・コンサルティング・グループではコンサルタントおよびプロジェクトリーダーとして1979年から1984年を過ごし、製造業向けのコンサルティングサービスに貢献した。 その間、ホワイトハウス・フェローとして運輸省長官を2年間補佐した。 その後、1984年にはMITの教授数名と共同で Ceramics Process Systems Corporationを設立し、会長兼社長を務めた。

wikipedia

1992年からハーバード・ビジネス・スクールの教員となり “Building and Sustaining a Successful Enterprise”というコースを担当している。この間、わずか2年で博士課程を取得し、その博士論文は、最優秀学位論文賞、ウィリアム・アバナシー賞、ニューコメン特別賞、マッキンゼー賞のすべてを受賞した。

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2000年にはイノサイトも設立する。さらに、2005年には関連会社 Innosight Venturesを立ち上げ、シンガポールにおけるベンチャーキャピタルも手掛ける。ここでの経験を生かし、Rose Park Advisorsという投資会社も2007年に設立した。 イノベーションと企業の成長に関する研究が評価され、最も影響力のある経営思想家トップ50を隔年で選出する THINKERS50 のトップに3回連続で選ばれた。

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書籍「イノベーション・オブ・ライフ」の外観(流れ)

「イノベーションのジレンマ」で登場する企業の破壊的イノベーションに関する「理論」に着目し、その「理論」が「人生」にも役立つ、または、「人生」も戦略的な理論に基づいて歩まなければ後悔することになってしまうというストーリーです。

ではその理論とはどのようなものなのかということですが、わかりやすく表現すると、次の三つの簡単な質問に応えるための理論だということができます。

  • どうすれば、幸せで成功するキャリアを歩めるだろうか?(第1部)
  • どうすれば、家族や友人、同僚たちとの関係を、揺るぎない幸せのよりどころにできるだろうか?(第2部)
  • どうすれば、誠実な人生を送り、罪人にならずにすむだろうか?(第3部)

そしてこの理論は、「何が、何を、なぜ引き起こすのか?」という、人間の人生の営みに対する深い理解に支えられていると言えます。私たちは、物心がついた頃から、短期的、中期的、長期的な目標を持ちながら生きています。

そしてその目標は、自分なりに考えた戦略や誰かから学んだ戦略によって達成されていくわけですが、そう簡単には行きません。目標に向かおうとする様々な過程で、思いもよらない突発的な事態が起こり、常に選択に迫られます。

何かを選択した結果、新たな戦略が立てられ、再び目標に向かおうとするのですが、その目標ついつい見誤ってしますので。私たちは、ついつい「短期的かつ衛生要因的(収入や快楽)目標」に目を奪われ、「長期的な家族・仕事での幸せ」のことを置き去りにしてしまいます。

この理論では、「短期的かつ衛生要因的(収入や快楽)目標」に向かってしまうプロセスを、「何が、何を、なぜ引き起こすのか?」という観点で理解し、「長期的な家族・仕事での幸せ」に向かうための戦略を教えてくれます。

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第1部:幸せなキャリアを歩む方法について

まず「第1部:幸せなキャリアを歩む方法について」で述べられている主な主題ですが、それは、「私たちが行動する上での優先事項」、「自分自身で立てる計画と訪れる機会のバランス」、そして「自分の資源をどのように配分するか」ということです。

そしてこれらの主題は、「戦略プロセスを活用して充実したキャリアを築く方法」として、次のようなプロセスで示されています。

  • プロセス1:私たちを本当に動機づけるものとは何かを見極める(インセンティブとモチベーションのバランス、モチベーションとして「自己の成長、誰かの為に、人生の意味」を考える)
  • プロセス2:動機づけが得られるキャリアを見つける為の「意図的戦略(予期された機会)と創発的戦略(予期せぬ機会)のバランスを取ることが重要
  • プロセス3:「意図的戦略」または「創発的戦略」のどちらかの戦略を採用した場合に、その戦略を推進するために自分の資源(時間、努力、知識、お金など)をどのように配分するかを慎重に決める

以上の3つのプロセスが「幸せなキャリア」を築くことに重要な要素であり、その為の「理論」が解き明かされていきます。

プロセス1:私たちを動かすもの(優先事項)

まず最初は、私たちを動かすものについて正しく理解する必要があるとされていますが、「動かすもの」には次の二つがあります。

  • 誘引理論(インセンティブ):報酬の与えられ方によって仕事のやり方が変わる(1967年に二人の経済学者によって発表された論文)
  • 動機付け理論(モチベーション、二要因理論):人が本心から何かをしたいと思うことであり、報酬や好不況に関係なく持続される

私たちが、仕事をしたり地域活動をしたり、特には家族との関わりにおいても「何を優先するか」を判断する際に、この「インセンティブとモチベーション」の優先順位や関係性が影響していると考えられています。

誘引理論(インセンティブ)

これは、報酬や労働環境(職場、休日、残業など)といったいわゆる「衛生要因」に関するものと言えます。しかし、これらの衛生要因について言えることは、「衛生要因に関す欲求には際限がない」、「衛生要因を改善しても会社や仕事を好きになるわけではない」といったことが知られています。

衛生要因を直ちに改善しても、突然仕事が好きになるわけではなく、逆に「さらなる報酬アップ、さらなる労働環境改善」といった際限のない要求に繋がることが多く、経営者にとって「報酬は死の罠だ」とも考えらているのです。

確かに、「仕事に不満がある」の反対は「仕事に満足している」ではなく、「仕事に不満がない」状態であることが多く、いかにして衛生要因に頼らずに「仕事に満足」、「仕事にやりがいを持つ」状態にできるかが経営者および働く者自身の課題ともなるのです。

動機付け理論(モチベーション、二要因理論)

一方の動機付け理論は、仕事を「やり甲斐のある仕事」、「他者から評価・感謝される仕事」、「自己の責任や成長が得られる仕事」として位置付けられうような要因と言うことになります。

このような要因は、外からの働きかけや刺激にはほとんど関係なく、自分自身の内面や仕事そのもに内在する条件と大いに関係があるものと言えます。例えば目の前の仕事についての動機付け要因を確認するには、自分自身に次のような問いをしてみると良いです。

  • この仕事は、自分にとって意味があるだろうか?
  • この仕事は、自分に成長する機会を与えてくれるだろうか?
  • この仕事から何か新しいことが学べるだろうか?
  • この仕事で、私は責任を任されるだろうか?
  • この仕事で、私は評価され、何かを成し遂げられる機会を得られるだろうか?

これらの問いに「イエス」という答えが得られるのであれば、その仕事はきっと「愛せる仕事」なのだと言えます。「愛せる仕事」は「人のためになる仕事」であり、自分自身が仕事を愛するとともに、他の誰かにも動機付け要因が満たされるような仕事を与えることが大切なのです。

では、「愛せる、人のためになる仕事」とは一体どのような仕事なのでしょうか? クリステンセンはこの書籍の中で、「経営者」という仕事も「愛せる、人のためになる仕事」であると言っています。

「経営者(マネジメント)」は、立派に実践するば、最も崇高な職業の一つであり、自分のもとであ働く人に対して、毎日8時間〜10時間という時間をあずかっていることになります。だから経営者という仕事は、働く人々が動機付け要因に満ち溢れた仕事と生活をできるよう、その責任を負う仕事なのだと。

最後に、本節の結びとしてとても大切な示唆を与えてくれる文章が書かれていますので、以下の引用にて紹介します。

私たちが最も陥りやすい間違いの一つは、それさえあれば幸せになれると信じて、職業上の成功を示す、目に見えやすい証に執着することだ。もっと高い報酬、もっと権威のある肩書き、もっと立派なオフィス。

こうしたものは結局のところ、あなたが職業的に「成功」したことを、友人や家族に示すしるしでしかない。だが仕事の目に見えやすい面に囚われたとたん、ありもしない蜃気楼を追いかけた、私の何人かの同級生と同じ道をたどる危険にさらされる。

今度昇級すればとうとう幸せになれる、あなたは思うかもしれない。だがそれは雲をつかむようなものなのだ。

動機付け理論は、普段自分に問いかけないような問題について考えよ、と私たちを諭している。

この仕事は、自分にとって意味があるのだろうか? 成長する機会を与えてくれるのだろうか? 何か新しいことを学べるだろうか? 誰はに評価され、何かを成し遂げる機会を与えてくれるだろうか? 責任を任されるだろうか?

これらがあなたを本当の意味で動機づける要因だ。これを正しく理解すれば、仕事の数値化しやすい側面にそれほど意味を感じなくなるだろう。

イノベーション・オブ・ライフ

プロセス2:予期された機会と予期せぬ機会のバランス

プロセス2において、「自分を動かすものは何なのか?」を理解することができたと思います。しかしながら、理解しただけではどうしようもありません。実際に、「動機付けを与えてくれ、かつ衛生要因を満たしてくれるキャリア」を実際に見つける必要があります。

ではどのようにして「動機付けを与えてくれ、かつ衛生要因を満たしてくれるキャリア」幸せで成功するキャリアをつかむことができるのか? そのヒントとなるのが、二つ目のプロセス2:自分自身で「計画」する戦略と突然「機会」として現れる戦略について、「バランス」を取りながらどちらかを選択してゆくというものです。

「計画」する戦略と突然「機会」として現れる戦略は次のように説明されています。

  • 「計画」する戦略(意図的戦略):予期された機会を中心とする計画を実行する(前もって予見し、意図的に追求することができる)
  • 突然「機会」として現れる戦略(創発的戦略):予期されない機会を追求し、予期されない問題を解決するうちに下す、日々の様々な決定が凝縮した戦略

簡単に言うと、予め計画して推進する戦略(意図的戦略)と、予期しない事態が起こ理、それを解決すために柔軟にとる戦略(創発的戦略)と言うことになるのですが、このような事態は誰の人生にも、そしてどんな企業活動にも起こりうることです。

逆に言うと、予め定めた戦略(意図的戦略」の通りにことが進むことはほとんどありません。人生や企業活動(仕事)の途中では様々な問題が起こるわけですが、問題が起こるたびに、私たちは、予期しなかった問題に対処するために対策を講じなければなりません。

その対策が「創発的戦略」となっていくわけですが、この創発的戦略が生まれた段階で、私たちは選択しなければなりません。

そう、当初から考えていた「意図的戦略」に基づいて行動し続けるのか、それとも、新しい「創発的戦略」に切り替えるのか? ここで、「創発的戦略」に切り替えた場合には、「創発的戦略」が「新たな意図的戦略」となるのです。

私たちは、日々このように「意図的戦略」と「創発的戦略」の選択に迫られるのですが、このバランスを取ることが大切だとクリステンセンは言います。

意図的戦略が有効な状況とは

給料や福利厚生といった「衛生要因」とやり甲斐や情熱等の「動機付け要因」の両方を与えてくれるような仕事が、すでに見つかっているのであれば「意図的戦略」を取るのが理にかなっていると言えます。

そのような場合には、意図的に設定した目標の達成に向けて、今の仕事に打ち込むことが最善の行動であり、途中途中で現れる予期せぬ機会に合わせて戦略を修正する必要はありません。

創発的戦略を取るべき状況とは

一方、衛生要因と動機付け要因を満たしてくれるような仕事がまだ見つかっていないのであれな、道を切り開こうとする企業のように、「創発的戦略」を取る必要があります。「創発的戦略」は、様々な場面で突然現れる予期せぬ機会を、チャンスと捉えて実験することを意味します。

このような予期せぬ機会を繰り返すことで、やがて自分が好きになれるような分野の仕事が見つかり、動機付け要因を高め、かつ衛生要因を満たしてくれるような素晴らしいキャリアを歩むことができるようになるのです。

「戦略」と言うのは、予期された機会(意図的)と予期せぬ機会(創発的)が組み合わさって生まれるものである為、心の扉を開け、どんどんと外へ出ていくことで、自分の能力と関心事項、優先事項を発見・再認識することが大切なのです。

意図的戦略と創発的戦略の有効性を評価する方法

それでは、意図的戦略や創発的戦略が現れた際に、それが有効かどうかをどのように評価すれば良いのだろうか?

本書の中では、その「評価に役立つツール」として、「発見志向計画法」と言うものが紹介されている。「発見志向計画法」とは、イアン・マクラミンとリタ・マグラスが開発した手法で、「戦略が成り立つためには、どんな仮定の正しさを証明する必要があるか」を考えるものだとされています。

も少しくだけた言い方をすると、今検討している「戦略」について、「この戦略が成り立つためには、何が言えればいいのか?」と考えることになります。

企業活動で言うと、新しい事業計画を立案する場合には、様々な市場動向についての仮定(例えば、競合商品の数や価格、潜在顧客数、販売予想など)に基づいて事業計画案を作成します。そして、投資家はその事業計画を評価して投資すべきかどうかを決めることになります。

「投資すべきかどうか」について、より良い判断を下すために「発見志向計画法」が有効だとういことになります。事業が成り立つ条件として設定されていくつかの「仮定」に中で、「少なくともどの仮定が立証される必要があるのか?」について熟慮することで、見栄えのいい事業計画数値に惑わされることなく、投資判断ができるようになるにです。

またこの手法は、個人が仕事を選ぶ際にも有効です。仕事を選ぶ際に「この仕事で成功し、幸せになるためには、どんな仮定の正しさが証明されなくてはならないだろう?」と自問し、それをリストアップしてみましょう。そこにリストアップされた内容は、自分の力で何とかなるものなのか?それとも誰かに何かを提供してもらう必要があるのか?

転職しようとしている場合、なぜその仕事を楽しめると思うのか? どんな根拠があるのか?これを考え、証明することによって正しい戦略を持つことが、人生においても大切なのです。

プロセス3:戦略への資源配分

これまで、幸せな人生を送るために必要なや仕事を獲得する際に大切な「動機付け」や「戦略」についてお話ししましたが、これらをいかにして獲得してゆくかが、実は最も重要なテーマと言えます。

そしてこの最も重要なテーマが、「自分の資源をどのように配分するか」と言うことになります。「自分の資源」と言うと、最初に思いつくのが「時間」ですが、それ以外にも「知識」、「お金」などがありますが、その大切な特徴は「有限、限りある」と言うことです。

企業であれ人生であれ、実際の戦略は、限られた資源を何に費やすのかと言うことを、私たちは日々の無数の決定から生まれているのです。

しかし、この「資源配分」には「パラドックス」があり、私たちは常に「パラドックス」の中で選択に迫られます。その「パラドックス」と言うのは、例えば個人の人生で言えば、「短期的な利益や幸せ」と「長期的な利益や幸せ」であり、企業で言えば、「企業の戦略や利益」と「従業員個人の戦略や利益」のようなものになります。

例えば個人の人生を考えると、目先の利益(給料、ギャンブル)や欲望(美味しい食事や満足)を満たすのに資源を使うのか、それとも将来の利益(貯蓄や投資)や幸せ(家族関係や友人)のために資源を配分するのかと言うことになります。

また例えば企業で言えば、長期的な成長戦略やビジョンを掲げ、そこの資源を配分しながらも、短期的な結果(売上、利益)をもとめるのかと言うジレンマなどがあります。

私たちは、ついつい短期的な目先の利益や幸せを満たすために資源を配分してしまいがちですが、それでだけでは長い人生を通しての幸せを掴み取ることはできません。企業も、個々の従業員の戦略や満足を優先し、企業の中長期的なビジョンや理念を疎かにすると、結果的の存続そのものが危うくなり、結果的に従業員が幸せになれないと言う事態を引き起こしてしまうのです。

このような「資源配分のパラドックス」を理解し、適切な戦略に資源を配分することが重要なのです。

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