シニアの転職。過酷な50代キャリアを乗り切る方法

明治安田生活福祉研究所が6月に発表した「2018年 50代・60代の働き方に関する意識と実態」という調査結果から、50代のキャリアに関する過酷な実態が明らかになりました。

詳細は以下のURLより原文を読んでみてください。
「2018年 50代・60代の働き方に関する意識と実態」

<出典元:https://kaigo.news-postseven.com>

その実態はというと、

  • 定年前正社員の8割が、定年後も働くことを希望
  • 定年後就労者の4割が、役職定年で年収が半分未満にダウン
  • 役職定年に伴い年収減となった人の6割がモチベーション低下

といった状況なのです。

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役職定年制度について

日本の多くの企業では役職定年制を導入していますが、これは部長や課長といった役職についている社員に設けられている制度です。設定された年齢に達すると役職を外れることになるもので、企業ごとに定められた年齢以上の人が管理職でいることがなくなります。

これは、組織内の人事において新陳代謝を促す(下から上がってくる人に管理職ポスト与える)為の制度で、平成22年度の人事院調査によれば、従業員が500人以上の企業のうち35.4%がこの制度を導入しているとのことです。

役職定年の年齢は企業によて異なりますが、概ね60歳定年制の会社では、55歳から57歳くらいになっています。部長や課長になっていた人も、定年前の数年間は、無役となって勤務するわけです。

ここで苦しいのが、大きく収入が減るという事です。多くの日本企業の給与体系は、役職と共に給与も多くなるという仕組みである為、役職定年で役職が無くなるとその分の収入が減ることになります。

また、職場は同じであっても。仕事の内容も、研究開発・営業・マーケティングといった直接的な業務から、書類整理や業務サポートといった間接的な業務へと変わることが多いようです。(元部下が上司になったりすることもあります)

まあ、「後進に道を譲れ」といったところでしょうか。

このような状況を反映するかのように、アンケート調査では以下のような声が聞かれるようです。

  • 役職定年で4割の人の年収が半分未満にダウン
  • 役職定年に伴い年収減となった人のうちの6割がモチベーション低下
  • 所属が異動した場合には、それまでの知識・技能・経験が活かせなくなった
  • 元上司が所属内に残ると、新しい役職者がやりにくく自分自身もがやりにくい

定年後の就労について

60歳定年後の就労については、8割の人が定年後も働くことを希望している、50代後半から60代の年代で高くなっています。(男女ともほぼ同じ割合)

定年後も働きたい理由

定年後も働きたい理由のトップは「日々の生計維持のため」です。また、年齢層が高いほど、生きがいや社会とのつながりをより意識し、この傾向は男性に比べて女性の方がたかくなっています。

定年後に希望する働き方

それなりの年齢になってくると、体力はもちろんのこと気力も衰えます。多くのシニアは、大きな変化もなくゆったりと働きたいと思うものです。その傾向をはアンケートにも表れており、男女とも50代以上の年代では、7割が「継続雇用」を希望しています。

その理由ですが、「今まで培ったスキルやノウハウを活かせる」というのがトップで、その後「職場や勤務地といった環境を変えたくない」、「会社から継続雇用を頼まれた」と続きます。会社側としても、給与を下げたうえに継続して働いてくれるのであればそれにこしたことはないということのようです。

定年後も働いている理由(60代へのアンケート)

既に60歳定年後に働いている人へその理由を聞いてみると、60代前半は「日々の生活維持」であり、60代後半は「生活のハリ、生き甲斐」となっており、これは定年前の50代へのアンケート結果と一致しています。

やはり、実際には「仕事を続ける」ことで、生活維持はもちろんのこと、健康維持や生き甲斐を持ち続ける(社会とのつながりも含め)ことができていることが伺えます。

一方で、定年後の仕事には満足していないという声もあります。これは、「思ったより収入が少ない」、「やりがいを感じない」といったもので、継続雇用なのか転職なのか、それとも独立なのかという、分岐点でのいくつかの選択肢を誤ったのかもしれません。

働き続ける上での障害・課題

働き続ける上での障害や課題は、「肉体的な衰えや気力など身体的事情」は最も多く、年齢と共にその割合は多くなります。また、男性に比べて女性の方が不安に感じる傾向にあるようです。

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また、その他の不安要因としては、「自分が受け入れてもらえる仕事が見つけられるかどうか」、「働きたいと思えるような仕事が見つけられるか」といった内容が続きますが、やはり、「体力や気力」といった心身的な衰えに起因する「不安」が出てくるのかもしれません。

完全に引退を希望する年齢

次は面白いアンケートなのですが、「引退したいかしたくないか」という問いに対して、男女ともに、2割~3割くらいのシニアが「完全な引退はしたくな」と答えています。また、65歳で就業中の方に聞いたところ、今後の10年の内(66歳~75歳)までには引退したいとこたえていますが、これは「当面は引退したくない」という意思表示かと思われます。

65歳で元気に働いているシニアは、ある程度充実感もあり、引き続き働き続けたいという意欲に満ちているのかも知れません。

早く引退したい理由

一方で、「なるべく早く引退したい」と答えた人は、50代前半で17%程度で比較的多いのですが、年齢と共に減少し、60代前半では12%、65歳を過ぎると6%程度にまで減少します。早目に引退したい理由は、「趣味の時間を持ちたい」、「体力・健康に不安がある」、「仕事よりも家族とに時間を持ちたい」といったものが多いようです。

50代に突入して、定年後に思いをはせた時点では、「早めに引退して、趣味に打ち込もう、家族と過ごそう」とがんが得ているようですが、いざその年代になってみると、様々な要因(経済的、仕事の要請、欲望の高度化)で働き続けることを選択するようです。

企業に求めたい取組

60代男性は、「継続雇用時の処遇改善」や「シニア層の就労に関する職場の理解」について、企業に改善を求めたいと感じているようです。少子高齢化で企業も人手不足、採用難の時代。シニアを戦力として活用したい企業は、様々なシニアの環境変化(体力や気力の衰え、職場への気遣い等)を認識する事が重要です。

キャリアプランやライフプランを考える機会の有無

最後に、定年までにキャリアプランやライフプランについて考えたかどうかについて聞いたところ、会社の提供する研修や自己啓発の一貫で検討した人は5割~6割でした。一方で、考える機会はなかったと答えた人は男女ともに3割弱であり、あまり考えてこなかったという実態も浮かびあがりました。

50代のキャリアを乗り切る方法

さて、それではどのようにシニア世代のキャリを構築してゆけば良いのかということになりますが、その一つのヒントは「COO(最高執行責任者)やCFO(最高財務責任者)などの経営人材の需要が高いにもかかわらず、人材不足状況になっている」という点です。

後継者不足等に悩む中小企業の問題は、いまや大きな社会問題になりつつあります。そんな中での「シニア世代」の活躍機会は豊富で、次なるキャリアを「経営者になる」という選択肢もあるのです。

しかし、このようなキャリアを検討する場合でも、特に意識すべき点があります。それは、

  • 年収にこだわりすぎない
  • 会社の大きさにこだわりすぎない
  • 事業価値の向上にこだわる
  • 職責(ミッション)や権限にこだわる

という点です。

「経営という仕事」になればなるほど、規模や年収よりも、責任と権限、結果へのコミットが重視されます。そして、その職責を全うした結果的として報酬が後を追いかけてくるものであると認識しなければなりません。

これまでの長い仕事経験(ポータブルスキル)を活かして、新しい場所で最適な方法を見つけ出すといったしょうな、変化への適応力の高さも、活躍するミドル・シニア世代の顕著な傾向であり、企業から求められる理由でもあるのです。

一方では、過去の成功体験にこだわり続けることなく、常に自分の弱点や不足点を把握して、学び続けるという姿勢も重要です。「自分に足りないことを知る」ということは、また、行動にもつながります。

シニア世代には、これまで蓄えたきた貴重な経験(ポータブルスキル)資産と、そこから湧き出る自信があるはずです。この貴重な資産を活用して新たな場所で活躍することで、「中小企業の廃業危機」という課題に立ち向かい、そのポータブル資産を後世に引き継いでゆくことこそが、長きに渡りサラリーマン社会に身を置いてきた者の使命なのかも知れません。

まとめ

以上、50代から60代のサラリーマンが直面する「定年(役職定年も含む)」と、その後のキャリアについて、明治安田生活福祉研究所が実施した意識調査を交えながらお伝えしてきました。そのポイントは次の通りです。

  • 定年前正社員の8割が、定年後も働くことを希望(生活日維持と生き甲斐)
  • 定年後は同じ企業に継続雇用を望む傾向が強い。但し、定年後就労者の4割が、役職定年で年収が半分未満にダウン
  • 50代では早く引退したいと考えていても、60代になるとできるだけ長く働き続けたいと考えるようになる
  • 働き続ける理由は、経済的理由、社会とのつながり、健康維持
  • シニアのキャリアには、それまで蓄えたポータブルスキルという貴重さ資産を活用し、社会の課題に立ち向かうようなチェレンジもある

あなたも、今のうちに「次なるキャリア」について検討してみてはいかがでしょうか?

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